2019年インディーベスト

In a hyperspeed world, it is increasingly meaningful to sit with the vision of one artist for an extended period of time. It’s an experience that can offer shelter from the noise—or it can offer better noise, if that’s what you’re looking for. by Pitchfork

 

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『Down the Valley』NOT WONK

『燦々』カネコアヤノ
『光の中』踊ってばかりの国

『i,i』Bon Iver
『Immunity』Clairo
『When I Get Home』Solange
『Two Heads』Big thief

『U.F.O.F』Big thief
『schlagenheim』black midi
『The Talkies』GIRL BAND

 

冒頭のやつはめちゃくちゃ共感したPitchforkの2019年ベストイントロダクション。これをヒントに2019年振り返る。

 

様々な問題が可視化された2010年代の総決算だったのか、2019年、アイデンティティの消失を伴う殺伐とした年だった。当たり前に音楽は時代を写すし、土地に関係なく皆が同じ問題に直面している。そんなことを感じた、インディ・オルタナ要素をもつ国内外アルバム10作。

 

ダブリンやサウスロンドンから生み出されたポストパンクの流れはヒリついた怒りを抱えながらカウンター・ミュージックとしての熱狂を生み出し、反対にClairoやbeabadoobeらインディ・ポップアーティストは自身の現代病や恋愛などパーソナルな部分を耳打ちするかのように歌い上げ、若者が追い求めるアイデンティティの拠り所となった。ソランジュ、ラナ・デル・レイはここではない別の昔や故郷を歌い、それは日常から目を背けるための一時的な盾になったし、Bon Iverの美しいハーモニーとアンサンブル、ティン・ヴァーノンのありのままの声で訴えられた連帯への願いは正しくあろうとすることへの後押しをしてくれた。

 

国内ではNOT WONKがblack midiのポストパンク〜ソウルまで取り入れる感性やフラストレーションを近い温度で、かつ冷静な真のオルタナティブを持って表現した。そしてカネコアヤノはパーソナルなドリームポップとは違う形で日常を歌い、日々を生きるための言葉で私たちに寄り添う。世界は繋がってる、大きな問題を共有している。


ことインディ・オルタナに限られるかもしれないが、2019年音楽は大きく分けて二つの役割を求められていたように感じる。あらゆる問題の盾に、アイデンティティの一部になりうる“内省の美”、そして出口の見当たらない混沌への静かな怒りを代弁する"肉体的焦燥”。この二つを表現したBig Thiefの2作品とNOT WONK『Down the Valley』が自分が捉えた2019年という年を表すマスターピースになった。